ハヤブサ消防団

タイトル:ハヤブサ消防団

著者:池井戸 潤 (著)

刊行:2022/9/5

 

 

 

選定のきっかけ

amazon audibleの「2023年 もっとも聴かれた本ランキング」で1位にランクインしていたため、気になってきいてみた。

普段、小説はほとんど読まないのだが、今は育休中で日中のBGM的に流してみたところこれが良かった。

 

これまではPodcastやビジネス書をaudibleで流すようにしていたのだが、これらはどうしても「聴く」態勢にさせられる。例えば料理をしていてイヤホンで聴くというような場合には良いのだが、育児中はイヤホンではなくスピーカーで音を流すので、場所によっては音が聴き取りづらい。

家事をしたり子どものお世話をしたりと定位置にいることはあまりないし、今のところ聞き逃してしまった!という場合にすぐに携帯に手を伸ばせる状況にないこともしばしばである。

 

その点、小説は、細切れに聞いていても大まかなストーリーは分かるし、(自分が小説を読むことに対してさして思い入れがないこともあり)ある部分を聞き逃しても問題がない。(ビジネス系だと、重要な部分を聞き逃してしまうとその本を読む意味がなくなってしまう場合もある)

 

最悪、ストーリーが負えなくても、やはりプロの小説家が綴る文章は美しいので、2,3分その美しい言い回しに耳を傾けるだけでも学びがあったり癒やされたりする。

 

再生時間16時間、などと示されるとウッとなるところではあるが、1日1〜2時間適当に流しておくだけで2週間もあれば終わってしまう。

 

子どもが昼寝している間はこれまで通りイヤホンでpodcastBBC Newsを聞き勉強しつつ、子どもが起きている間はリフレッシュとして小説を流すのは悪くないサイクルである。

 

 

感想

池井戸潤氏の作品は夫がハマっていた下町ロケットを横から眺めていた程度に鑑賞したのが最初で最後。著者の名前はよく見聞きするものの、こうして小説をしっかり読むのはもちろん初めて。

 

細切れに聴いただけにもかかわらずとてもおもしろく、ハラハラドキドキした。

活字でゆっくり、じっくり読んだら、さらに面白いことだろう。

ストーリーが進むたび、登場人物が次々怪しく感じられた。

 

それにしても、久しぶりに小説を読んだ(聴いた)のだが、その言葉選びの巧みさに感動した。ストーリーももちろんだが、言葉だけで情景がありありと浮かぶ様はまさにプロの技だと思った。

 

 

 

 

 

夜回り先生 子育てで一番大切なこと

タイトル:夜回り先生 子育てで一番大切なこと

著者:水谷修 (著)

刊行: 2014/5/1

 

 

 

選定のきっかけ

お受験ブルーズさんのブログで子供向けのおすすめ本が紹介されている中で、親向けに紹介されていたのがこちらの本。

・・・だったと記憶しているのだけれど、当の記事が見つからない(汗)

もしかしたら違うところだったのかも。

 

本の内容と感想

水谷さんの見ている世界が全体的にエクストリームなので、ひとつひとつ紹介されている事例もやや極端。

またその一方で、書かれている内容は「まあ、そうだよね」と言う感じで、目新しいものがあるというよりは納得感や説得力があるという印象。

家庭では笑顔が大事、親子が一緒に過ごす時間が大事、日本の四季を大切にしましょう・・・など、理想を言えばそうだよね、と思うし、それが大切なのも理解はするけれど、全体的に「親の意識や行動を変えよう」という号令にとどまっていて、具体的な親のアクションには繋げづらいのではないかという印象。。。

 

何回か同じようなエピソードや言い回しが登場するのは、雑誌の連載をまとめた形の本だからのよう。

ざざっと読めばいいかな、という感じ。

 

その中でも、ここは自分にとって目新しかったな、ドキッとさせられた、覚えておきたい、という部分をメモしておく。

 

 

子どもは、優しい、素晴らしい大人に出会った数が多ければ多いほど、いろいろなものの見方を身につけ、自ら考え生きる力を培っていく。

→この論でいえば、親以外の大人にたくさん出会わせてあげた方がいいよね。そして私もそう思う。親子で閉じないほうがいい。

 

仏教に伝わる「無財の七施」の教え

眼施」:優しい目で人を見る

和顔施」:にこやかな顔で人と接する

「言施」:人と優しい言葉で接する

身施」:自分の身体でできることで人に奉仕する

心施」:人のために、いつも心を配る

床座施」:人に席や場所を譲る

房舎施」:人に自分の家やものを提供する

仏ですね。。。

なかなかすべてはできないけれど、せめて最初の3項目だけでもできたら変わりそう。

 

日本の親たちは子育てが下手

本当の良い親になるためには、絶え間ない学習と努力が必要

ドキッ。その通り。

 

 

子どもの前での喧嘩、悪口、陰口はNG

アメリカでは子どもの前で日々夫婦喧嘩をしたり悪口を言ったりすることは児童虐待

愛し合っていると思っている二人が喧嘩する姿は子どもの心を深く傷つける。

確かにうちの親は一度も喧嘩している姿を見たことがない。

 

現代の子どもたちは、集中力がなく、一つのことを継続して取り組んだり考えたりする力がない

いくつかのことを同時に行う習慣から来ていると推察される

食事中の携帯、明日からやめましょう。

 

子どもと一緒にその日のニュースを語り合う時間を作る。

今の子はニュースを全然知らない、とのことだが、自分自身、ニュースに真剣に耳を傾け、社会情勢にアンテナを張るようになったのはつい最近のこと。

でも、もっと早くからそうであるべきだったと思う。

とはいえ我が家はテレビを殆ど見ないので、ニュースについて語り合うというのもどう取り入れるか悩みもの。

 

ことばは一度発したら責任が伴う

これは確かに、と思う。

子育てのシーンに限らず、人間関係全般に言えることだと思う。

特に今はSNSなどに軽い気持ちで言葉を載せてしまいがちだが、その端々に意識を向けることも少ないし、その影響を想像することもあまりしていない。

 

でもその言葉の先で誰かが傷ついていたり、回り回って自分を傷つけることになったりする可能性はあると思うし、

それはリアルの日常のコミュニケーションでも言えると思う。

 

自分自身、もう少し言葉を大切に扱っていかないといけないし、それを娘たちにも伝えていかないといけないなと気付かされた。

 

 

 

 

 

 

 

Rによるやさしい統計学

タイトル:Rによるやさしい統計学

著者:山田 剛史 (著), 杉澤 武俊 (著), 村井 潤一郎 (著)

刊行:2008/1/25

 

 

 

選定のきっかけ

長らく疑問に思っていたベイズ統計について再び調べてみようと思い立ち、ネットで調べていたところこちらの記事に当たった。

qiita.com

 

この記事によるとベイズというのは分析の主義という位置づけらしく、その心を学ぶためには対抗する主義である頻度主義について学ぶ必要があるそうだ。

 

ということで、この記事の中でおすすめされている本を順に手にとっていくことにした。

 

 

本の内容など

第一章が初級、第二章が中級という構成である。

基本的にRを用いることを前提としているので、ところどころでRのコマンドが示されている。

 

著者は心理学や教育学など、どちらかといえば文系の扱いとなる学生を教えていることもあり、統計にあまり親しくない方も想定して書かれているように思う。

 

感想

結局、序盤の数ページしか読まなかったのだけど笑

この序盤で紹介されている青木先生のHPや、その他の参考文献などがさらに興味深かった。

 

私は現段階ではRを使いたいという目的で本書を手に取ったわけではないので、要所要所でRのコマンドが出てくる本書はやや煩雑にも感じたため、一旦他の書籍に移ることとした。

 

しかしながらRを使うという目的であればかなりわかりやすい類の本であることは間違いないので、またいつか戻ってきたいと思う。

 

 

 

 

広告測定の新時代?メディアミックス・モデリングで戦略再構築【Web記事】

 

www.campaignjapan.com

 

 

クッキーやモバイルIDの廃止による、プライバシー環境の変化に伴って、デジタルマーケティングの現場では、メディアミックス・モデリング(MMM)が復活してきている。

 

<中略>

 

MMMの精度を確保するには、いくつかの分かりやすいアプローチがあるという。

 

ひとつは、MMMに実験的方法を組み合わせて、メディアのインクリメンタリティ(増分効果)を測定することだ。実験データは、MMMの出力結果を補正したり、ベイズ理論に基づくMMMモデリング(確率の概念、頻度ではなく知識や信念に基づいて確率を解釈)の事前確率値として扱ったりすることができ、現実世界の結果を、モデルに取り入れることで精度を高めることができる。

 

しかしウー氏は、MAPE(平均絶対パーセント誤差)やR2(決定係数R2乗)のような最高統計スコアを目指すだけでは、最も正確なMMMを保証することにはならないと警告している。

 

 

ビジネスを理解することは、モデルの期待値を導き、ビジネスに統計的尺度に焦点を当てた指標を提供し、ビジネスにとって最も意味のあるモデルを選択するのに役立ちます。ビジネス上の考慮事項と現実的な精度はバランスをとる必要があるのです」と、ウー氏はCampaignに説明した。

 

ペリスコープの最高執行責任者、ロレーヌ・クリス氏は、重要なのは質の高いデータの収集に集中することだと指摘し、自動化が精度とスピードの向上に役立つだろうと指摘する。

 

ブランドは、収集・集計されるデータの質に焦点を当て、分析に適切なアトリビューション・システムを取り入れることで、精度を確保できるという。

「MMMでは通常、多変量回帰分析などが使用されます。その一方で、MMMモデリングの効果を測定するためには、広告費やROASなど、ブランドのマーケティング活動に関わるデータソースの収集が必要となります」とクリス氏はCampaignに語った。

 

 

 

MMMは、AIとML(機械学習)の文脈において、ルネッサンスを迎えており、技術の進歩が莫大な利益をもたらす可能性がある。

例えば、機械学習は、多様なソースからデータをクリーニングし、フォーマットやマージンといった必要なデータ作業を自動化し、大幅な時間の節約と精度の向上につながっている。 機械学習の高度なアルゴリズムは、天候が売上に与える影響や、季節性が広告予算に与える影響など、データの複雑なパターンや相互関係を明らかにすることができ、人による分析では捉えきれない洞察も提供する。

 

MMMモデルは、入力や初期設定の小さな変化にも敏感に反応するため、マーケターは、有意義なインサイトを模索しながら、モデルがビジネスの期待に沿った結果を提供できるよう、芸術と科学の間で適切なバランスを取る必要がある。

 

MMMモデルは一般的に過去データに基づいて構築されているため、マーケティング戦略が急速に進化すると一気に古くなる恐れがある。マーケターは、ビジネスとの関連性やビジネスの期待値を維持するために、キャンペーンの開始に向けて機敏に適応する必要がある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈黙の勇者たち: ユダヤ人を救ったドイツ市民の戦い

タイトル:沈黙の勇者たち: ユダヤ人を救ったドイツ市民の戦い

著者:岡 典子

刊行:2023/5/25

 

 

 

選定のきっかけ

COTEN RADIOで紹介されたのをきっかけにこの本を手に取った。おそらくヒトラーの回ではなく、差別(人権)の歴史とかいう類のテーマだったと記憶している。その中で紹介されている事例の多くがこの本から出てきていると知り、興味深く思った。

 

 

本の内容など

ホロコーストユダヤ人の迫害、ヒトラーナチスドイツというと、どうしても焦点が当たるのがやはりアウシュヴィッツを代表とする強制収容所絶滅収容所の存在やその殲滅行為だ。

多くの人の関心はそこに向いており、自分自身長らくヒトラーナチスドイツに興味があると思っていた。

 

ただ、最近思うのは、自分は決してヒトラーという男やナチスドイツという組織に興味があるわけではなさそうだということだ。

 

それよりも、こうした迫害がどういったメカニズムで生じるのかだったり、宗教の対立だったり、人々の倫理観的な部分に興味があるようだ。

 

そのような自分の関心の中で、絶滅収容所の悲惨さを描くものではなく、収容所送りを逃れて潜伏生活を送った人々の過酷な日々や、それを助けるドイツ人に焦点を当てている本書は非常に興味深かった。

 

感想

つい最近読んだ本の中で「人間は生来定住に向いていない」という内容を読んだばかりだが、潜伏生活を送るユダヤ人たちは1日〜長くても3ヶ月で住処を移すほかなかった。定住を否定できる自分の生活の豊かさを思ってため息が出る。

 

何名かのユダヤ人の潜伏生活を追っていく様子は、さながら短編ドキュメンタリーのオムニバスのようだった。

ページを進めるたびに胸が苦しくなる思いだった。

 

また、彼らに手を貸したドイツ人たちへの思いもまた複雑だ。

現代から振り返ればかれらは勇者で英雄だ。しかし、当時でいえば、法令を犯した犯罪者でもある。

 

自分に置き換えてみることがこれほど難しい事例はなかなかないのだが、敢えて自分に置き換えるチャレンジをしてみるが、悲しいながら自分はきっとこういったリスクを犯すタイプではないだろう。

ただ、その中でも、自分が是とする信念を貫きたいし、時代の価値観に囚われるのではなく自らの倫理観を大切にした行動を取りたいと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

怒らないをやってみた子育てライフ

タイトル:怒らないをやってみた子育てライフ

著者:ニコラ・シュミット (著), 鈴木ファストアーベント理恵 (翻訳)

刊行:2022/4/7

 

 

選定のきっかけ

先日読んだ叱る依存が止まらないという本と同じタイミングで予約した本。

体調を崩したりなんだりで、やっと読了しました。

kaori-reading-journal.hatenablog.com

 

 

本の内容など

なぜ攻撃的になってしまうのか?

脳は危険が迫っているときだけは近道を選ぶ。前頭前野での情報分析を迂回する。闘争・逃走反応)

生存のために必要な反応だったが、ストレス下に置かれたときに、なんの考えもなしに行動をとってしまうことにつながる。

 

ストレス反応は主に脳の扁桃体から起こる。

非常事態において生存率を高めるために重要なタスクをいくつか実行する。

→そのひとつとして、共感力や思いやりの心を低下させる。生き残るためには目の前の生き物を躊躇なく攻撃しなければならない。

 

私たちの多くはいま、常時ストレスにさらされている。

体を動かさないと、上昇したストレスホルモンの値が落ち着くまでに時間がかかる。

そこに新たなストレス刺激を感じると慢性的なストレス状態に陥る。

 

親はストレスにより常時「警戒モード」になっているため、子どもの行動すべてが脅威に見えてしまう。

 

人間は「自然」から離れると怒りっぽくなる。

参考事例)クン・サン族 は遊牧しているときはリラックスしていたが、定住し、母親の出産間隔が短くなるようになってから、子どもを叱る姿が目撃されるようになった。遊牧生活の間は働く時間も極めて短かった。

人間は、現代のような忙しないスケジュールの中で生活するようにはできていない。また、集団で育てるのが当たり前であり親と子が1対1で生活するように想定して造られていない。

 

ストレスが子どもに与える影響

一方で、子どもたちは、プレッシャーを与えないほうが学ぶ可能性とそのスピードが高まるとされている。

 

ストレスシステムは人生の早期に形成され、それが後々の人生でのストレスに対する反応を決定づける。さらに、ストレスは遺伝する。

 

「ノー」がら逃れられない子どもは、心の内に亡命していく。「精神的独房」に入る。

大人の言うことをひたすら無視することで、恥ずかしい思いをさせられる状況や排除から、自分を守ろうとする。

 

こうした影響はあとになってから現れる。

幼児期のトラウマ体験が、ストレスホルモン・システムの長期にわたる誤作動と精神疾患を患う可能性の上昇につながるという研究がある。

 

 

 

対処方法

  • ストレス耐性はトレーニング(瞑想・ボディ・アウェアネス、マインドフルネス)で高めることができる。
  • 子どもに対して、自分が求めていることを子どもも理解しているはずだと期待してはいけない。きちんと説明する必要がある。そのときに、ポジティブなコミュニケーションが有効。

  • 何を望むにしても、わたしたちには限られたリソースしかないことを理解する必要がある。「スケジュール上ぴったり合うものが必ずしもすべて実行可能とは限らない」
  • 子どもたちは親に対して何を求めているか?

    とある調査で常に上位に挙がるのが「親と一緒に過ごす時間」である。ただ子どもたちと過ごす時間を取るだけでよい。

  • 「集中」>「一度にたくさん」
    人間はマルチタスキングに向いていない。
    仕事をベッドに持ち込まない。
    子どもと一緒に過ごしているときはソーシャルメディアをチェックしない。
    仕事中に友人と電話で話さない。

  • 子どもの行動について「ベストを想定する」
    ex. キッチンでガチャガチャと音が聞こえる。
      →NG:自分の分のおやつだけ取ってるの?
      →GOOD:あら、パンにバターを塗っているの?てっきりみんなのためにテーブルのセットをしてくれているのかと思ったわ。たしかにもうご飯の時間ね。一緒に食事の準備をしようか?

  • 小さいときから一緒に「解決策」を探す
    怒りが湧いてきたら、クッションを叩いてもよい。床に座り込んでもよい。
    衝突したときに、相手に恥をかかせたり脅したり責めたりする代わりに、自分の気持ちを話すように促すことで感情を言語化する。
    また、他人に対して「◯◯ちゃんがあんな顔をしているのは悲しいからなんだよ」など、相手の立場に立って物事を考える手助けも必要であり、思いやりを学んでいく。

  • 子どもの行動の裏にある欲求を考えてみる。

  • コミュニケーションの重要な土台は子どもの脳が「イエス・モード」になっていること。でないと学べなくなってしまう。
  • 一般論を隠れ蓑にせず、「私はそれをしてほしくないと思っている」ことを明言する。抽象的なルールではなく、それを望む人の存在を感じられる方が子どもは言うことを聞いてくれる。

 

 

感想

ここに記しているもの以外にも、日々の生活の中での声掛けのヒントや考え方、捉え方のアドバイスなどが後半にたっぷりと記してある。私のように一度さらっと読み流すのではなく、この本をバイブルのように手元に置いて、時々見返すのが賢い選択であろう。

 

以前に読んだ「叱る依存がとまらない」に比べて、より実践的なアドバイスが多いように感じた。(私はどちらの本も同じくらい有益だと思っているが、「叱る〜」が自分の心や頭へのアプローチが中心だったのに比べてこの本は子どもとの関わり方をより詳しく著していると思う)

 

ちなみに闘争・逃走反応は英語ではfight-or-flight responseというらしく、日英どちらでもこんなに語呂よくなるものなんだなあと妙に感心したのであった…

 

 

 

 

 


 

 

幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書)

タイトル:幸せのメカニズム 実践・幸福学入門

著者:前野 隆司

刊行:2013/12/18

 

 

選定のきっかけ

 最近、勝間和代さんのオンラインサロン「勝間塾」が気になっていて、無料のメルマガに登録し始めた。メルマガは毎日配信されていて、勝間さんの動向や興味が垣間見られるのと、勝間塾のメンバーさんのプチコラムが読める。

そのメルマガの中で、勝間塾の課題図書として挙げられていたというのがこちらの書籍だった。

 

育休も終盤に差し掛かっている今、比較的時間に余裕のあるうちに生き方、働き方のヒントをより多く得たいと考えた。

 

本の内容など

 

人は「他人との比較で幸福と感じる傾向」を持っている。(過去の幸福学の知見より)
しかし、「人との比較による幸せ」は長続きしない。(研究結果に基づく)

 

ディーナーの人生満足尺度(7スケールで聴取)

  1. ほとんどの面で、私の人生は理想に近い
  2. 私の人生は、とてもすばらしい状態だ
  3. 私は自分の人生に満足している
  4. 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた
  5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう

 

ポジティブ感情8項目

  1. 活気のある
  2. わくわくした
  3. 気合いの入った
  4. きっぱりとした
  5. 機敏な
  6. 誇らしい
  7. 強気な
  8. 熱狂した

 

ネガティブ感情の8項目

  1. いらだった
  2. 苦悩した
  3. ぴりぴりした
  4. びくびくした
  5. 恥じた
  6. うろたえた
  7. 心配した
  8. おびえた

 

人間は具体的で身近な問題から解いてしまうという特徴を持っている。

達成感という報酬をすぐに得られるため。

→幸福のメカニズムを理解すれば目標がわかり、幸福を目指せる

 

もっとも幸福との相関が高いと言われているものは、健康、信仰、結婚の3項目。

 

フォーカシング・イリュージョン

ダニエル・カーネマン提唱

人は所得などの特定の価値を得ることが必ずしも幸福に直結しないにも関わらず、それらを過大評価してしまう傾向がある。

*年収と感情的幸福は比例しない

 

カレンダー◯✗法(カレンダーマーキング法)

自分はどうすれば幸せなのかを知るのに役立つ。

幸せな日は◯、不幸せだったら✗、中くらいだったら△を手帳に書く。

+その理由を簡単に書き添える。

→俯瞰すると気づきになる。どういう日に幸せなのかがわかる。

 

因子分析とは

因子分析とは、多変量解析(たくさんの量的データの間の関係の解析)の一つで、多くのデータを解析し、その構造を明らかにするための手法。

そのデータが意味していることを整理して表すための軸をいくつか探す方法。

*物事を分類するのではなく、物事の要因をいくつか求め、それら複数の要因がその物事にそれぞれどの程度寄与しているかを数値化する方法。

*味覚の例がわかりやすい。

 

 

幸せの4つの因子

  1. 「やってみよう!」(自己実現と成長)因子
    • コンピテンス(私は有能である)
    • 社会の要請(私は社会の要請に応えている)
    • 個人的成長(私のこれまでの人生は、変化、学習、成長に満ちていた)
    • 自己実現(今の自分は「本当になりたかった自分」である)
      さらに、「日常的な目標と人生の目標の間に一貫性のある人は、人生満足度が高い」という結果。
      ただし、地位や名誉や金などの画一的な地位財を得るのではなく、多様な良さを得たり発揮したりする「非地位財」が重要
  2. 「ありがとう!」(つながりと感謝)因子
    • 人を喜ばせる(人の喜ぶ顔が見たい)
    • 愛情(私を大切に思ってくれる人たちがいる)
    • 感謝(私は、人生において感謝することがたくさんある)
    • 親切(私は日々の生活において、他者に親切にし、手助けしたいと思っている)
      つながりの「数」は主観的幸福にあまり寄与せず、「社会的なつながりの多様性と接触頻度」が高いと主観的幸福が高い傾向がある。
      人を幸せにしたいと思っている人は、自然と幸せになるようにできている。

  3. 「なんとかなる!」(前向きと楽観)因子
    • 楽観性(私はものごとが思い通りにいくと思う)
    • 気持ちの切り替え(私は学校や仕事での失敗や不安な感情をあまり引きずらない)
    • 積極的な他者関係(私は他者との近しい関係を維持することができる)
    • 自己受容(自分は人生で多くのことを達成してきた)
      ポジティブな気分は「関係性への着目」(全体のことを考えることができる)を促し、ネガティブな気分は「個別要素への着目」(細かい部分に目がいってしまう)を促す傾向がある。

      政治家やコンサルタントなど、全体を俯瞰して物事を大きな視点から解決していく仕事には、感情的幸福度が高い人が向いているかも。

      ネガティブ気質な人もメタ認知で自分を変えられる。
      自分が笑ったり起こったりしている=認知
      そんな自分を客観的に見る=メタ認知
      自分を帰るためには、自分が今どう振る舞っているかをメタな視点から冷静に見る必要がある。→改善できる。

      ピグマリオン効果
      人間は、期待されると、期待された通りの成果を出す傾向がある。


  4. 「あなたらしく!」(独立とマイペース)因子
    • 社会的比較志向のなさ(私は自分のすることと他者がすることをあまり比較しない)
    • 制約の知覚のなさ(私に何ができて何ができていないかは外部の制約のせいではない)
    • 自己概念の明確傾向(自分自身についての信念はあまり変化しない)
    • 最大効果の追求(テレビを見るときはあまり頻繁にチャンネルを切り替えない)

美しいものを創る人は見る人よりも幸せ

実験によると、美しいものを多く鑑賞している人は、大して幸せではない。

一方で、音楽やダンス、美術やスポーツ、化粧など、なんでもいいから創作している人は主観的幸福度が高い傾向があった。

 

 

感想

タイトルのとおり、幸福のメカニズムが手順を追って丁寧に紐解かれており非常に興味深かった。

自分の性格上、第一因子のやってみよう因子(前に読んだ本の「冒険モード」に近い気がする)が強いことは自覚していたが、第三、第四因子は弱いなと思った。

 

自分の性格をポジティブで独立したものにもっていけるかどうかは一旦さておき、ポジティブな気分が知覚にもたらす影響や、ピグマリオン効果などは、とても興味深かった。

 

また、本編からはややずれるが、積読中の「ファスト・アンド・スロー」の著者ダニエル・カーネマンの名前が挙がったり、因子分析の説明が大変わかりやすかったり、分析手法が非常に丁寧に描かれている点が面白かった。(同じく調査や分析を生業にしている友人もこの部分に興味を持ったので、この分野を専門にしている者の性なのかもしれない)