タイトル:怒らないをやってみた子育てライフ
著者:ニコラ・シュミット (著), 鈴木ファストアーベント理恵 (翻訳)
刊行:2022/4/7
選定のきっかけ
先日読んだ叱る依存が止まらないという本と同じタイミングで予約した本。
体調を崩したりなんだりで、やっと読了しました。
kaori-reading-journal.hatenablog.com
本の内容など
なぜ攻撃的になってしまうのか?
脳は危険が迫っているときだけは近道を選ぶ。(前頭前野での情報分析を迂回する。闘争・逃走反応)
生存のために必要な反応だったが、ストレス下に置かれたときに、なんの考えもなしに行動をとってしまうことにつながる。
ストレス反応は主に脳の扁桃体から起こる。
非常事態において生存率を高めるために重要なタスクをいくつか実行する。
→そのひとつとして、共感力や思いやりの心を低下させる。生き残るためには目の前の生き物を躊躇なく攻撃しなければならない。
私たちの多くはいま、常時ストレスにさらされている。
体を動かさないと、上昇したストレスホルモンの値が落ち着くまでに時間がかかる。
そこに新たなストレス刺激を感じると慢性的なストレス状態に陥る。
親はストレスにより常時「警戒モード」になっているため、子どもの行動すべてが脅威に見えてしまう。
人間は「自然」から離れると怒りっぽくなる。
参考事例)クン・サン族 は遊牧しているときはリラックスしていたが、定住し、母親の出産間隔が短くなるようになってから、子どもを叱る姿が目撃されるようになった。遊牧生活の間は働く時間も極めて短かった。
人間は、現代のような忙しないスケジュールの中で生活するようにはできていない。また、集団で育てるのが当たり前であり親と子が1対1で生活するように想定して造られていない。
ストレスが子どもに与える影響
一方で、子どもたちは、プレッシャーを与えないほうが学ぶ可能性とそのスピードが高まるとされている。
ストレスシステムは人生の早期に形成され、それが後々の人生でのストレスに対する反応を決定づける。さらに、ストレスは遺伝する。
「ノー」がら逃れられない子どもは、心の内に亡命していく。「精神的独房」に入る。
大人の言うことをひたすら無視することで、恥ずかしい思いをさせられる状況や排除から、自分を守ろうとする。
こうした影響はあとになってから現れる。
幼児期のトラウマ体験が、ストレスホルモン・システムの長期にわたる誤作動と精神疾患を患う可能性の上昇につながるという研究がある。
対処方法
- ストレス耐性はトレーニング(瞑想・ボディ・アウェアネス、マインドフルネス)で高めることができる。
- 子どもに対して、自分が求めていることを子どもも理解しているはずだと期待してはいけない。きちんと説明する必要がある。そのときに、ポジティブなコミュニケーションが有効。
- 何を望むにしても、わたしたちには限られたリソースしかないことを理解する必要がある。「スケジュール上ぴったり合うものが必ずしもすべて実行可能とは限らない」
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子どもたちは親に対して何を求めているか?
とある調査で常に上位に挙がるのが「親と一緒に過ごす時間」である。ただ子どもたちと過ごす時間を取るだけでよい。
- 「集中」>「一度にたくさん」
人間はマルチタスキングに向いていない。
仕事をベッドに持ち込まない。
子どもと一緒に過ごしているときはソーシャルメディアをチェックしない。
仕事中に友人と電話で話さない。 - 子どもの行動について「ベストを想定する」
ex. キッチンでガチャガチャと音が聞こえる。
→NG:自分の分のおやつだけ取ってるの?
→GOOD:あら、パンにバターを塗っているの?てっきりみんなのためにテーブルのセットをしてくれているのかと思ったわ。たしかにもうご飯の時間ね。一緒に食事の準備をしようか? - 小さいときから一緒に「解決策」を探す
怒りが湧いてきたら、クッションを叩いてもよい。床に座り込んでもよい。
衝突したときに、相手に恥をかかせたり脅したり責めたりする代わりに、自分の気持ちを話すように促すことで感情を言語化する。
また、他人に対して「◯◯ちゃんがあんな顔をしているのは悲しいからなんだよ」など、相手の立場に立って物事を考える手助けも必要であり、思いやりを学んでいく。 - 子どもの行動の裏にある欲求を考えてみる。
- コミュニケーションの重要な土台は子どもの脳が「イエス・モード」になっていること。でないと学べなくなってしまう。
- 一般論を隠れ蓑にせず、「私はそれをしてほしくないと思っている」ことを明言する。抽象的なルールではなく、それを望む人の存在を感じられる方が子どもは言うことを聞いてくれる。
感想
ここに記しているもの以外にも、日々の生活の中での声掛けのヒントや考え方、捉え方のアドバイスなどが後半にたっぷりと記してある。私のように一度さらっと読み流すのではなく、この本をバイブルのように手元に置いて、時々見返すのが賢い選択であろう。
以前に読んだ「叱る依存がとまらない」に比べて、より実践的なアドバイスが多いように感じた。(私はどちらの本も同じくらい有益だと思っているが、「叱る〜」が自分の心や頭へのアプローチが中心だったのに比べてこの本は子どもとの関わり方をより詳しく著していると思う)
ちなみに闘争・逃走反応は英語ではfight-or-flight responseというらしく、日英どちらでもこんなに語呂よくなるものなんだなあと妙に感心したのであった…
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