バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること

 

タイトル:バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること

著者:中島 和子 (著) 

刊行:2016/1/28

 

 

 

 

選定のきっかけ

 

 

本の内容など

 

バイリンガルにもさまざまな形態がある。

バイリンガルとバイカルチュラルは異なる。

 

 

言語形成期(0〜15歳)にできること

  • 0−2歳(言語形成期前半・ゆりかご時代)
    • 愛情を持って赤ちゃんに話しかける
    • 不得手な外国語で話しかけるとぎこちなくなり、母語習得の機会を奪いかねないので要注意

  • 2−4歳(言語形成期前半・子ども部屋時代)
    • 語彙が増え、ことばによって自分の気持ちを表現し、ことばを使って考える時期
    • 外国語にふれることも可能。英語の耳づくりに適している
    • 「話しあい」=双方向のインターアクションが大事。子どもがこどばを聴いているだけではなく、どのように積極的に言葉を使い、話し合いをしているかが学校に入ってからの成績と深い関係がある。量より質が大切。

  • 4−6歳(言語形成期前半・遊び友達時代)
    • 社会性が発達、ごっこ遊び、集団生活ができるようになる
    • ことばの分析力もつき、しりとりなどの言葉遊びもできるようになる。
    • 文字に対する興味が出てくる。本の読み聞かせを日課にすると自分で本を読みたがるようになる。読み聞かせはモノリンガルの言語発達ではもちろん、バイリンガルを育てる上では欠かせない。
    • 母語で読み書きができるようにすることが最も効果的。

  • 6−9、10歳(言語形成期前半・学校友達時代前半)
    • 小学校に上がって、話しことばが塊、読み書きの基礎ができる大事な時期
    • 親子間での話し合い、交流は大切。一緒にテレビ番組を見たり、本を読んで話し合ったりすることで子どものことばの力が伸びる。
    • 2言語を育てるためには特にこの話し合い、読み聞かせが重要。

  • 9、10−15歳(言語形成期後半)
    • 小学校5年生頃には自立心が旺盛になり、自我が目覚め、勉強にも自分なりの取り組み方をするようになる。
    • 読解力もつき、抽象的な内容のものも読めるようになる。
    • 「外国」「外国人」への興味も出てくるため、この時期の海外旅行や海外キャンプなどは大きな意味がある。
    • ことばのコントロールや分析力も急速に伸びるので、単語を取り出して覚える、文法ルールを整理して頭に入れることもできるようになる。
    • 文化の差に対する理解や比較などもできるようになる。

 

ことばの習得の上での本の読み聞かせの重要性

  • 日常生活で触れることのない読みことばを与えてくれる。
  • 語彙だけでなく文法や文章でもより複雑で高度なものに触れる。

 

 

 

二言語の共有

2つの言語は「会話面」では分離しているが、「認知面」では共有している。

  1. 概念的な知識の転移
    例)「光合成」などの概念の理解
  2. メタ認知メタ言語ストラテジー(学習ストラテジー)の転移
    例)視覚化、語彙習得や暗記の方法、学習活動への態度や姿勢
  3. コミュニケーション・スタイルの転移
  4. 特定の言語的要素の転移
  5. 文字と音との関係:音韻意識の転移
    幼児期から小学校低学年にかけての文字習得の段階で起こる転移

 

 

 

母語の習熟度が第二言語の習得に影響する。

子どもはすでに持っている意味体系を新しい言語に行こうすることができる。

その逆もあり、外国語のちからは母語の高度の習得を助ける。

 

 

CLD児(Culturally and Linguistically Diverse/ 多文化・多言語環境に育つ子供)は学校では学校言語(L2)の力不足、家では継承語(L1)の力不足のため、常に自分自身を過小評価する。

CLD児との対話の中では現時点での学力や言語能力を前向きに評価し、子どもの自尊心を高め、アイデンティティを肯定することが必要。

 

知的活動に巻き込み、さまざまな言語活動を通してALP(Academic Language Proficiency=教科学習言語能力:学年とともに複雑さや抽象度が増す学習言語能力のこと)を伸ばすことも重要。

 

L2との接触が学校だけではなく、より広いコミュニティで生じないことには発達は期待できない。

 

 

バイリンガルを育てるうえで最大の役割を担うのが家庭。

脱稿は家庭で育ったことばの上にもうひとつの言葉を加えたりより強めたりする役割。

「日本語力」と「国語力」は混同されやすいが異なる。

「国語」は日本語がすでにできる子どもたちに、効果的な表現の仕方、深く読む力、鑑賞する力などを培うもの。

「日本語力」はそれより基礎のもの、国語力のベースラインとなるもの。

 

 

バイリンガルの基礎づくりで一番大事な家庭の役割:ことばの基礎になる第一のことば(L1)を育てること。

家庭で異言語環境をつくる場合、子どもの自然な母語の発達の足をひっぱることになりかねない点に注意。

 

母語の役割:社会性の発達、情緒の発達、知能の発達に不可欠

  1. 社会性の発達に伴って周囲の人々との交流のために初めてつかうことば
  2. 感情や意志を伝えるために子どもが初めてつかうことば、子どもの情緒の安定に必要
  3. 知能の発達に伴って考える道具として子どもが初めて使うことば
  4. 親が親子の交流に使うことば、親子の絆の土台となるもの
  5. 親の母文化(行動規範、価値観、感じ方)に裏付けられたことば、子どもが身につける初めての文化
  6. 親が作り出す過程の一員として受け入れてもらうために覚えるもの

 

親の語学力との関連

カナダの幼稚園では教室の入口に2つの袋がかけてあり、一方は「英語の舌」もう一方は「フランス語の舌」を入れる袋。実際には何も入っていないが、授業の終わりに自分の口から舌を出して袋に入れる、授業の前には袋から舌を取り出して自分の口に入れる、という動作を行い、場所によることばの使い分けをしている。

このような「場所」や「時間帯」での使い分けの工夫が効果的。

 

親の語学力が低い場合にできること

  • 外国語の学習のきっかけづくり:
    「おもしろいよ」「やってごらんよ」という導火線づくり。ただし、期待の過不足には要注意。適度が大事。
  • いい聞き役になる:
    「なんですって?」と聞き返すストラテジーが有効。話すきっかけづくり、両親に聞いてもらうという誇りにもなる。

親の母語でなくても、コミュニケーションの道具となる「秘密の暗号」として機能すれば良い。

 

 

家庭教育の注意点

  • 20代を目標に長期的に構える
    • バイリンガルになる道はひとつでない、短距離で行くことが最善でない。また、結果的にバイリンガルにならなくてもことばの発達の刺激になる。
  • 楽しい交流が主、ことばはおまけ
    • 知的、心的刺激をつくる。
  • あくまでも日本語、プラス英語
    • 英語力の下地に日本語力がある。
    • ことばそのものを教えようとしない。子どもにとって意味のある活動に子どもを巻き込み、新しいことばを必要不可欠な存在として使う。
    • 一つのことばを使ってもう一つのことばを教えてはいけない。(訳す、もう一つのことばで説明する、など)
    • 音節ごとに区切ってゆっくり話すのはNG
  • 「話しかけ」「話し合い」「読み聞かせ」の3本軸
    • ページの始めから終わりまで文字を読むだけでなく、表紙の絵や挿絵について話し合ったり、何が面白かったか親が感想を言うなど、親子のやりとりが大切。
    • 価値観、倫理観も教えることができる。
    • 文字の裏にある、目に見えない面白いストーリーの世界があるという気付きは、子どもの感受性や思考力を育む。
  • 学習仲間を大切に
    • 英語学習は長期戦。親にとっても子にとっても仲間のサポートが必要。