幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書)

タイトル:幸せのメカニズム 実践・幸福学入門

著者:前野 隆司

刊行:2013/12/18

 

 

選定のきっかけ

 最近、勝間和代さんのオンラインサロン「勝間塾」が気になっていて、無料のメルマガに登録し始めた。メルマガは毎日配信されていて、勝間さんの動向や興味が垣間見られるのと、勝間塾のメンバーさんのプチコラムが読める。

そのメルマガの中で、勝間塾の課題図書として挙げられていたというのがこちらの書籍だった。

 

育休も終盤に差し掛かっている今、比較的時間に余裕のあるうちに生き方、働き方のヒントをより多く得たいと考えた。

 

本の内容など

 

人は「他人との比較で幸福と感じる傾向」を持っている。(過去の幸福学の知見より)
しかし、「人との比較による幸せ」は長続きしない。(研究結果に基づく)

 

ディーナーの人生満足尺度(7スケールで聴取)

  1. ほとんどの面で、私の人生は理想に近い
  2. 私の人生は、とてもすばらしい状態だ
  3. 私は自分の人生に満足している
  4. 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた
  5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう

 

ポジティブ感情8項目

  1. 活気のある
  2. わくわくした
  3. 気合いの入った
  4. きっぱりとした
  5. 機敏な
  6. 誇らしい
  7. 強気な
  8. 熱狂した

 

ネガティブ感情の8項目

  1. いらだった
  2. 苦悩した
  3. ぴりぴりした
  4. びくびくした
  5. 恥じた
  6. うろたえた
  7. 心配した
  8. おびえた

 

人間は具体的で身近な問題から解いてしまうという特徴を持っている。

達成感という報酬をすぐに得られるため。

→幸福のメカニズムを理解すれば目標がわかり、幸福を目指せる

 

もっとも幸福との相関が高いと言われているものは、健康、信仰、結婚の3項目。

 

フォーカシング・イリュージョン

ダニエル・カーネマン提唱

人は所得などの特定の価値を得ることが必ずしも幸福に直結しないにも関わらず、それらを過大評価してしまう傾向がある。

*年収と感情的幸福は比例しない

 

カレンダー◯✗法(カレンダーマーキング法)

自分はどうすれば幸せなのかを知るのに役立つ。

幸せな日は◯、不幸せだったら✗、中くらいだったら△を手帳に書く。

+その理由を簡単に書き添える。

→俯瞰すると気づきになる。どういう日に幸せなのかがわかる。

 

因子分析とは

因子分析とは、多変量解析(たくさんの量的データの間の関係の解析)の一つで、多くのデータを解析し、その構造を明らかにするための手法。

そのデータが意味していることを整理して表すための軸をいくつか探す方法。

*物事を分類するのではなく、物事の要因をいくつか求め、それら複数の要因がその物事にそれぞれどの程度寄与しているかを数値化する方法。

*味覚の例がわかりやすい。

 

 

幸せの4つの因子

  1. 「やってみよう!」(自己実現と成長)因子
    • コンピテンス(私は有能である)
    • 社会の要請(私は社会の要請に応えている)
    • 個人的成長(私のこれまでの人生は、変化、学習、成長に満ちていた)
    • 自己実現(今の自分は「本当になりたかった自分」である)
      さらに、「日常的な目標と人生の目標の間に一貫性のある人は、人生満足度が高い」という結果。
      ただし、地位や名誉や金などの画一的な地位財を得るのではなく、多様な良さを得たり発揮したりする「非地位財」が重要
  2. 「ありがとう!」(つながりと感謝)因子
    • 人を喜ばせる(人の喜ぶ顔が見たい)
    • 愛情(私を大切に思ってくれる人たちがいる)
    • 感謝(私は、人生において感謝することがたくさんある)
    • 親切(私は日々の生活において、他者に親切にし、手助けしたいと思っている)
      つながりの「数」は主観的幸福にあまり寄与せず、「社会的なつながりの多様性と接触頻度」が高いと主観的幸福が高い傾向がある。
      人を幸せにしたいと思っている人は、自然と幸せになるようにできている。

  3. 「なんとかなる!」(前向きと楽観)因子
    • 楽観性(私はものごとが思い通りにいくと思う)
    • 気持ちの切り替え(私は学校や仕事での失敗や不安な感情をあまり引きずらない)
    • 積極的な他者関係(私は他者との近しい関係を維持することができる)
    • 自己受容(自分は人生で多くのことを達成してきた)
      ポジティブな気分は「関係性への着目」(全体のことを考えることができる)を促し、ネガティブな気分は「個別要素への着目」(細かい部分に目がいってしまう)を促す傾向がある。

      政治家やコンサルタントなど、全体を俯瞰して物事を大きな視点から解決していく仕事には、感情的幸福度が高い人が向いているかも。

      ネガティブ気質な人もメタ認知で自分を変えられる。
      自分が笑ったり起こったりしている=認知
      そんな自分を客観的に見る=メタ認知
      自分を帰るためには、自分が今どう振る舞っているかをメタな視点から冷静に見る必要がある。→改善できる。

      ピグマリオン効果
      人間は、期待されると、期待された通りの成果を出す傾向がある。


  4. 「あなたらしく!」(独立とマイペース)因子
    • 社会的比較志向のなさ(私は自分のすることと他者がすることをあまり比較しない)
    • 制約の知覚のなさ(私に何ができて何ができていないかは外部の制約のせいではない)
    • 自己概念の明確傾向(自分自身についての信念はあまり変化しない)
    • 最大効果の追求(テレビを見るときはあまり頻繁にチャンネルを切り替えない)

美しいものを創る人は見る人よりも幸せ

実験によると、美しいものを多く鑑賞している人は、大して幸せではない。

一方で、音楽やダンス、美術やスポーツ、化粧など、なんでもいいから創作している人は主観的幸福度が高い傾向があった。

 

 

感想

タイトルのとおり、幸福のメカニズムが手順を追って丁寧に紐解かれており非常に興味深かった。

自分の性格上、第一因子のやってみよう因子(前に読んだ本の「冒険モード」に近い気がする)が強いことは自覚していたが、第三、第四因子は弱いなと思った。

 

自分の性格をポジティブで独立したものにもっていけるかどうかは一旦さておき、ポジティブな気分が知覚にもたらす影響や、ピグマリオン効果などは、とても興味深かった。

 

また、本編からはややずれるが、積読中の「ファスト・アンド・スロー」の著者ダニエル・カーネマンの名前が挙がったり、因子分析の説明が大変わかりやすかったり、分析手法が非常に丁寧に描かれている点が面白かった。(同じく調査や分析を生業にしている友人もこの部分に興味を持ったので、この分野を専門にしている者の性なのかもしれない)