タイトル:ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳)
刊行:2009/6/19
選定のきっかけ
amazonのほしいものリストの登録履歴を見るに、この本に興味を持ったのは2023年1月31日。今日は2023年10月16日である。
1月に何があったのか、なぜこの本に興味を持ったのかは忘れてしまったし、なぜ10月に入って改めて興味を持ったのかも不明である。Twitterのブックマークも見てみたけど何もない。誰がどこでおすすめしてたんだろう…
ともかく、データアナリストとして働く上で必要な本だと感じたに違いない。
本の内容など
人は「黒い白鳥」の存在を予測できない="外れ値"があることを予測できない
- 歴史に接すると、人間には3つの症状=不透明の三つ子、が出る
- わかったという幻想
世界は実感するよりずっと複雑(orランダム)なのに、何が起こっているか自分には分かっていると思い込む。 - 振り返ったときの歪み
後付でものごとを解釈する。 - 実際に起ったことに関する情報を過大評価する。
ものごとの分類を行えば、それに縛られる。
- わかったという幻想
- 分類のいい加減さ
- "母親の腹の中にいる子どもを堕ろすのは賛成なのに死刑には反対する人がいるのはどうしてか"
- "母親の腹の中にいる子どもを堕ろすのは賛成なのに死刑には反対する人がいるのはどうしてか"
- 私たちが能力だと思っているもののほとんどは、結果からあとづけで決められる。
月並みの国⇔果ての国
- 「果ての国」で「黒い白鳥」が起きる。
- 物理的な数量(身長や体重)は外れ値が少ない。データひとつが全体に与える影響はごくわずかである ⇔ 社会的な数量(=情報としての数量、例えば財産など)はデータひとつに全体が大きく依存している。
➔データから分かったことは常に疑ってかかるべきである- 物理的な数量の例…身長、体重、カロリー摂取、パン屋さんや小さなレストランの店主、自動車事故、死亡率、IQなど
- 社会的な数量の例…財産額、所得、著者一人あたりの売上、グーグルでのヒット数、都市の人口、地震の被害の大きさ、企業規模、商品価格、インフレ率など
- 物理的な数量(身長や体重)は外れ値が少ない。データひとつが全体に与える影響はごくわずかである ⇔ 社会的な数量(=情報としての数量、例えば財産など)はデータひとつに全体が大きく依存している。
裏付けばかり探してしまう「追認バイアス」
- 「テロリストはほとんど皆イスラム教徒だ」という命題と「イスラム教徒はほとんど皆テロリストだ」という命題は全く異なるが混乱しやすい。
- 帰納法を疑うのは私たち人間には難しい
- 人間には特定の分野でだけ帰納的な推論を行うような性質がある
人間は深読みに弱く、真実よりも単純化/要約するのが好き
- 連なった事実を見ると、なんらかの説明を織り込まずにはいられない人間の習性
- 論理的な事実や因果関係を無理矢理当てはめてしまう
➔わかりやすくはなるが、道を踏み誤る - 人間がこれを行うのは、生物学的な仕組みに合わせて情報の次元を落とす必要があるため
- 情報を入手する、蓄積する、複製したり取り出したりするのにはコストがかかる
➔次元を減らして小さくまとめたい - 記憶は事後的な情報に左右される
抽象的な統計データの情報はストーリーほど人の気を引かない
人間が黒い白鳥を正しく捉えられないのは、主に人間が"システム1"を使うから
- 情緒に引っ張られ、事象が生じる可能性を見誤る
- 講釈の誤りを避けるには、実験>物語、経験>歴史、臨床実験>理論を重んじることが必要
人間の幸せの感じ方
- いい気分の強さよりも、いい気分になった回数の方が幸福度に強い影響を与える
- 海馬は慢性のストレスを受けて萎縮し、元には戻らない。一見害のないストレスが人を強くする、ということはない。
- 生存バイアスがあるよ、みたいな話
- 人間は説明をほしがる動物。ものごとにはすべて特定可能な原因があると思い、一番わかりやすい話を唯一の説明だと思ってしまう傾向がある。
オタクとは、枠の中でしか考えられない人のこと
- 教室で得られる知識は往々にして不毛
- 教養はなくとも、現実のありようや自分の知識を増やすことに興味を持つ人の方がある意味では科学的
- モデルに則らないものを無視してしまうリスクがある。
→そういう自分の性質を理解した上で計画を立てる必要がある。
予測の限界、知識の増加とそれを相殺する確信の低下
- 自分の知識に過信しがち
- 情報が多い→仮説が増える
- 一旦仮説を立てると、人間はなかなか考えを変えられない
- 仮説を先延ばしにしたほうがいい結果になる(10段階vs5段階のピンボケ写真)
- どうしてこんなに予測するのか?
- アンカリング(錨)という脳の性質
- 何か数字をでっちあげ、それをアンカー(錨)として不確実性に感じる不安を抑える
→システム1を活用する(基準点と比較して評価する)方が頭を使わずに済むため
- 何か数字をでっちあげ、それをアンカー(錨)として不確実性に感じる不安を抑える
- アンカリング(錨)という脳の性質
感想
ちょうど並行して再読していた「ファスト&スロー」の著者「ダニエル・カーネマン」の名前が挙げられた頁ではおおっとなった。笑(特に大した言及があったわけではないが、脳のはたらきのシステム1とシステム2について解説があった)
しかし全体を通して非常にわかりにくく、読み進めるのがなかなかに困難な本だった。
これが原著によるものなのか、翻訳によるものなのかはわからないが、「リースリングを飲んでいた」というのをそのまま書いているあたり、翻訳のせいなのではないかと思う。(ワインに造詣がある程度ないと、リースリングを飲む=リースリング種の白ワインを飲むということは全くわからないだろう。)
下巻があるのでこのまま読み進める必要があるのは間違いないが、少し時間を置いてチャレンジしたい。
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