タイトル:戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)
著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ (著), 三浦 みどり (翻訳)
刊行:2016/2/17
選定のきっかけ
本書は1985年に出版されたアレクシエーヴィッチのデビュー作である。
著者が雑誌記者だった30歳代に第二次世界大戦の独ソ戦下でソビエト連邦軍に従軍した500名以上の女性たちの証言をまとめたエピソード集のようなものである。
本は完成したものの、2年間出版を許可されず、ペレストロイカ後に出版された。2015年にノーベル文学賞を受賞。
2023年2月で、ちょうどロシア=ウクライナ戦争が1年を迎えたこと、
参加しているオンラインサロンで「戦争は男のもの。女がリーダーだったら戦争なんて起こらない」という主旨のコラムを読んだこと、
元々近現代の戦争や迫害の歴史に興味があったこと、
などの理由からこの本に興味が湧いた。
2023年3月読了
本の内容など
本の内容は前述のとおり、女性たちの戦時下の話をまとめたものである。エピソードによっては長いものもあれば短いものもあり、また、軍隊における女性の様子を描いたものもあれば、街でのエピソードを記したものもあり内容は人によって本当にさまざまである。
感想
情景を想像して苦しくなるような描写が後を絶たない。
中でも私が胸を痛めた2つのエピソードを書き留めておきたい。
1つ目は、森林の中で敵陣から逃げ回るグループの話。
そのグループの中には生まれて間もない赤ちゃんを抱えた女性もいた。
赤ちゃんが泣いている。
母である女性は、やせ細ってもう母乳も出ない。
敵陣が近くに来ており、皆が沼地に入って隠れる。
赤ちゃんの声で敵陣に気づかれてしまう。
誰もそうしろと言ったわけではないが、女性は赤ちゃんを沼地に沈めてしまった。
2つ目は、村に敵陣が攻めてきた場面。
4人の子どもを持つ母親。末っ子を抱きかかえていたが敵に捕まってしまう。
敵から子どもを空中に投げるように指示される。
空中に投げたところで、銃殺してやると。
女性は、子どもを地面に叩きつけて自らの手で子どもの命を経った。
今年初めてNHKで大河ドラマを見始めました。松本潤さん主演の「どうする家康」です。
これも同じで、やっぱり確かに戦争は男のものだなと思いました。
男性らが戦禍で功績を挙げたり命を落としたりしている裏で、女性たちがとんでもない修羅場をくぐり抜けていたり犠牲になったりしている。本当に辛いなと思うし、今もどこかで(主にウクライナなどで)こうした思いをしている人がいると思うといたたまれない気持ちになる。
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